〔第5回〕 校正ですべき要素
校正は校正
一口に「校正」といってもさまざま
「これをすればよい」といった画一的なものではない
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それでも、「校正としてやるべきこと」は存在する
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「これで刷っても(公開・運用しても)大丈夫か」という観点は重要
原稿の特徴
だからといって、どの仕事も同じようにやればいい、というものではない
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原稿によって、それぞれ特徴があり
どこに力点を置けば良いかは、自ずとして違ってくる
①読む仕事
校正なので、すべての文字・図表・画像に目を通すのは大前提
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しかし、同じ「素読み」でも、原稿によって読み方は変わる
合わせる資料等が提供されず
素読みをするしかない場合も、少なくない
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そのなかでも、固有表現の表記など、
ある程度調べながら、確認する必要は出てくる
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また、文章が理解できなければ、誤字・脱字も拾えない
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「読む力」が常に問われる
②合わせる仕事
手書きの時代のように、「原稿引き合わせ」をする機会はほとんどない
しかし、赤字原稿はほとんどが手書きであり、
年度改訂なども、短い文章は、手書きであることが多い
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引き合わせの技術は、いまでも健在
整合性の分野になるが、
用語・表現・数値などを他の部分と合わせる必要もある
赤字あわせとは
赤字どおり直っていればよい、というほど単純なものではない
まずは、赤字どおりに直っているかが大前提
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引き合わせ漏れがないか、事後的に確認することは、最低限の仕事
赤字に誤り(誤字脱字、指摘箇所の間違い等)がある場合も少なくない
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修正箇所の前後は、必ず、ざっとでも素読みする必要がある
赤字の漏れ(過不足)がある場合もある
赤字が入ったことで、整合性に問題が出ることもある
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最後に、全体を素読みする必要がある
整合性も「合わせる」の一部
・何度も出てくる日付や文章
・注番号と注記
・参照ページと参照先
・前述・後述、「くわしくはこちら」などの存在
・同様に、Webでのリンクチェック
・見出しと目次
・見出しと柱・ツメ(インデックス)
・目次のノンブル、表紙・トビラ等
・図表と本文
・日付と曜日
・西暦と和暦
・地名と都道府県
・税抜き価格と税込み価格
・日本語と、英語・中国語(簡体字・繁体字)・ハングル等の他言語
・引用箇所と引用元の表記
などなど
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ただ読んだだけでは、分からないことも多い
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例外的に表現の一致まで求められることがある
カタログだと、安心・あんしん、簡単・かんたん、など
引用箇所と思われるところは、原文と同じか確かめる必要がある
原典の表記の確認も必須
③調べる仕事
・人名・施設名などの固有名詞・固有表現の表記
・所在地
・住所・電話番号・問い合わせ先・営業時間など
・年代、年月日(時期)など
・重要文化財などの指定(とくに国か県か市町村か)
・参照先(リンク先)は適切か
などなど
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事実確認(ファクトチェック)をどこまでやるのかの判断は難しい
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内容(論旨等)の確かさの確認は校正とは別
「校閲」の範疇となる
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きちんとした校閲は、本来、専門家である「校閲者」が行うべき
専門家ではない「校正者」が、内容の適否まで踏み込むのは危険
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それでも「確からしさ」は、念頭に置いておくべき
レシピなどでは、常識的にあり得るかは、気にするべき
(実際に作ってみることまでは不要)
整える観点
表記統一・用語統一は「整えること」の一環
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あまり形式的にやり過ぎると、
日本語表現の幅を狭めることになるので、注意が必要
体裁を整えることは、どの仕事でも必須
・版面に合っているか
・ヌリタシはされているか
・見開きのノドに文字はかかっていないか
・見出し・本文・罫線などのの大きさ・太さ・色などは揃っているか
・フォント・行間・アキ・字下げなどで不揃いはないか
・図表とキャプションのアキは、乱れていないか
・その他、見にくいところ、誤解を生みやすい体裁はないいか
写真の色調・鮮明さは対象外
それでも、明らかに違って見える場合は、指摘する必要がある
文体・言い回しも、読んでいてあきらかに違和感がある程度であれば
指摘しておいた方がよい
矛盾はないか
基本的に、整合性確認がこれに当たる
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しかし、内容的な矛盾は、形式的にはいかない
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論旨の矛盾と思われるところは
筆者が端折ていて、矛盾と思われることが、少なくない
また、書き直しているうちに、整合性が乱れてしまうこともある
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現状ではこう読めてしまう、という指摘は、
採用されることが少なくない
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全体の要旨・趣旨をつかむことが重要
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ここでも「読む力」が問われる
校正は、3つの要素のミックス
校正は、基本的に上記3つの要素
読むこと、合わせること、調べることの
ミックスと考えてよい。
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しかし、どの仕事も、どの要素も、同じ比重でやろうとすると
とてもではないが、身が持たない
人間の能力には自ずと限界というものはあり、
どこに力点を置くかの判断は重要
納期・予算の問題もある
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これが理解できるまで
優秀な人でも、1年程度はかかる
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さらに、自分で仕事を組み立てられるようになるには
早くても、もう1年程度かかる
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その前に、挫折してしまうことは、少なくない
校正の料金
校正のスキルを身につけるためには、それ相応な努力が必要
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校正料は、出す側にとっては、決して安くない
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しかし、業界全体として、安すぎると言わざるを得ない
実際、思いつきで自分の感じたことを出すに過ぎない「校正者」も
少なくないので、発注側を非難することはできない
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校正者は、最終的なジャッジを下すものでもないし
「神」でも何でもない
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「校正の役割」を自覚することは、極めて重要
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発注側に「校正」の役割を理解してもらうためには
業界全体のレベルアップが必須
そういう流れになっていないことは、極めて深刻
メリハリが大切
上記のすべてを、同じようなウエイトでやったら、とても身が持たない
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この仕事は、何を求めて、高い料金を支払ってまで発注してくれているのか
仕事の組み立てができることが重要
これは、なかなか難しい
それが分かって発注されることは希
校正は推敲とは違う
校正は、日本語の使い方も含めて
正確性を担保することにある
「日本語のプロ」という言葉に惑わされてはいけない
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したがって、筆者の「推敲」と混同してはならない
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本論そのものよりも、そのの周辺で、ミスは起こりやすい
自分が「読者」の立場で読んでいて
わかりにくいところはないか、不審に思うことはないか、という観点は必要
これも、読者対象によって違うことに、注意が必要